食生活と植物油栄養に関する講習会要旨
講師 (社)日本植物油協会 専務理事 神村 義則 氏
意外に日常的に付き合い深い食品だが実体は知られていない。油の原料はほぼ100%外国産なので、日本人は色々な種類の油を摂る。油がしっかり食べられるようになったのは戦後で40〜50年の歴史しかない。日本人として摂取歴史は短く、たった40〜50年で今や摂りすぎが問題になっている。そういう国は少なく、油はその国の人たち、民族の体格、食生活、歴史そういうものによって規制されてくる。その国がこうだから日本もこうしなくてはいけないというものではない。
原料による | →大豆油、菜種油、ゴマ油など |
→調合油 A+B+α2種以上混ぜたもの | |
用途による | →サラダ油、天ぷら油、調味油など |
製造法による | →圧搾油(一番絞り油)生絞り |
抽出油、サラダ油、白絞油、半精製油 |
油 | →液状 不飽和脂肪酸がメイン 菜種油など |
脂 | →パーム油(果肉油)、やし油、パーム核油 |
飽和脂肪酸がメイン |
日本の三大油脂は菜種油、大豆油、パーム油とパーム核油を足したもので、パーム油を入れることにより温度が下がってもパリッと仕上がる。
また、飽和脂肪酸なので酸化の心配がほとんどなく変質しない。例としてインスタントラーメンやスナック菓子などがあげられる。
食事バランスガイドは、油脂がいくらかを書いていない。一般の人にはわかりやすい表示だが、バターを使うか植物油を使うかによって違ってくる。油は素材の良さをひきたて、体には必要である。必須脂肪酸の供給源で脂溶性ビタミンの吸収を助け、足りないと体の機能を損なう。油の量は少なすぎず多すぎず、このバランスが難しい。植物性油脂、動物性油脂、魚の油のどれを摂るか注意が必要となる。植物油には大切な成分が含まれているが、量的には少なく、効果を期待して摂取するものではない。油は食品であり薬ではない。
植物油は、トリアシルグリセロールがほとんど大部分を占める。1番重要なのは脂肪酸の内容で、オレイン酸の含有量が1番多いのはオリーブ油といわれていた。が、品種改良により、ひまわり油、紅花油に多く含まれるようになった。ぶどう油(グレープシード油)にはリノール酸が70.5%とあとコーン油(57.2%)と続く。パーム油はパルミチン酸とステアリン酸で50%を占め常温で固形となる。油の種類により脂肪酸の含有量は大きく違う。オリーブ油、ひまわり油がよいといってもオレイン酸は必須脂肪酸ではないので、そればかり多く摂っていると必須脂肪酸の欠乏という問題が出てくる。菜種油100万トン、大豆油65万トン消費しているが、売られているサラダ油は菜種油と大豆油の混合品なので100対65の割合で混じっているとおそらく脂肪酸の構成としてはいいものになっているように思われる。「サラダ油はよくない」といわれるが、脂肪酸構成の面からみると混合することによりそのバランスがよくなる。
食べ物は体に良いものだがその食べ方の悪さに問題がある。特定保健用食品が出る前は普通の食品を上手に食べることにより健康管理をしてきたが、特定保健用食品が出てからは機能性を求めるようになった。物の考え方、おそらく根源は変わっていないが、一般の人の受け入れ方が変わってしまったように思われるので、植物油をいかに上手に取り入れるかを考え直す必要がある。
油の選び方としては、高価な物ほど効果があると思われ、うたい文句で選びやすい。賞味期限と安全期間は違うが、期限以降はメーカー保証はないので注意が必要である。
遺伝子組み換え食品が出てから10年位になるが賛否両論が続いている。新しい作物は人体実験ができないので、人体、動物、環境に影響がないかの安全性を確認した上で現在利用することが許されている。審査に対して信頼をもつかどうかが議論の分かれ目になる。
昔からの知識を今の時点に置き換えてその知識を見直すということ、それが新知識であり、新しいものばかりを追いかけると1番重要なものを見失うので注意が必要である。
(文責 研究教育 F.M)