指導者のための健康・栄養セミナー
講師 名古屋工業大学大学院 下村 吉治 先生
アミノ酸やアミノ酸代謝についての研究は、意外と熱心にされておらずまとまった研究報告がない。アミノ酸の働きとして、体をつくる骨格筋脳への作用等、最新情報を交え進めていく。
筋肉の約20%はたんぱく質であり、体重の約40%を占める骨格筋は、たんぱく質と3〜5g/kgの遊離アミノ酸を含み、たんぱく質、アミノ酸の貯蔵庫といえる。遊離アミノ酸濃度は一定を保ち、摂り過ぎたアミノ酸は肝臓、筋肉で分解される。このBCAA(バリン、ロイシン、イソロイシン)は、その分岐構造が体内では構成できないことから必須アミノ酸の一種である。食品中では、肉100g中のたんぱく質に対して、BCAAはその約20%で3〜4g含まれ、他の必須アミノ酸同様食品から摂取しやすい。BCAAの働きは、運動時のエネルギー源となり、またロイシンはインスリン分泌促進、たんぱく質代謝(分解抑制と合成促進)調整機能を持つ。
BCAAの生理活性はロイシン>イソロイシン>バリンの順に高く、ロイシンはインスリンの働きによる遺伝子からのたんぱく質発現促進に関与し、BCAA分解の2段階目・分岐鎖ケト酸脱水素酵素の活性化を阻害し分解を抑制する。さらに自身も分解され、たんぱく質の材料となるアミノ酸であり、代謝の調整役も担うため、過剰・不足はアミノ酸インバランスをおこす。食物のアミノ酸比からも、バリン1:ロイシン2:イソロイシン1の比率で同時摂取が有効かつ必要である。
運動は筋肉を破壊していくことで、たんぱく質(=アミノ酸)の分解が進み、血中にクレアチニンキナーゼ(CK)が染み出てくる。血中CK活性は筋肉のダメージの指標となる。また運動後の筋肉痛は、損傷した筋肉の炎症で回復の指標となる。BCAAは運動初期で分解され、筋肉だけでなく内臓含む全身で進み、体内でのBCAA量に関係なく分解は進む。運動前にBCAAを摂取すると、摂取したものから代謝され、血中CK活性は低く筋肉の損傷が軽減し、筋肉痛・疲労感の回復も早いことが複数のヒトでの実験で示されている。では、摂取量とタイミングであるが、体内遊離BCAA濃度は血液中に約0.06g/L、全身で0.2g以下、骨格筋に約0.1g、体重60kgとした人の筋肉中で2〜3gと少ない。またBCAA吸収は、摂取後30分でピークになり早いことから、運動30分前〜直前に4g、1回の摂取で効果が期待できる。4gの根拠は、肝硬変改善薬の研究にも裏打ちされている(アルブミン合成促進、こむら返りや運動中の筋肉痙攣の減少にも効果あり)。安全性については、現段階で確認はされているが、BCAA比率1:2:1で3つ同時摂取が条件付けられている。
中枢性疲労は疲労物質セロトニンの脳内増加が一因で、トリプトファン(Tri)から合成される。脳へのアミノ酸侵入ゲートでBCAAとTriは競合しており、通常はBCAAの血中濃度が高いため、Triが進入することはない。しかし、運動するとBCAA濃度が低下しTriが脳内に入り、セロトニンが増えるという仕組みである。BCAAはTri以外にもアミノ酸の脳内進入抑制を行っており、脳機能の正常維持に関与している。また、血中濃度が一番高いグルタミン酸(Gru)は、感染症時には免疫細胞等で消費され激減する。するとBCAAからのGru合成が進み、筋タンパク質分解も進む。このようにアミノ酸濃度調整にも関与している。
BCAAは食欲低下の改善に有効とする研究報告がある。また高たんぱく食(高BCAA食)は高炭水化物食に比べ、筋肉減少が少なく、食後の熱生産が高く体脂肪減少が促進されている。 食後のインスリン上昇も緩やかで、グルコース代謝の改善効果もみられる。
運動によるたんぱく質合成促進は、子ども、成人、高齢者における実験のいずれにおいても、運動前はアミノ酸、直後にたんぱく質の摂取で効果があり、筋肉量増加が報告されている。さらに、グルコース不足では運動中にアミノ酸が利用され運動後にも影響するため、十分なアミノ酸、たんぱく質と糖質の同時摂取が鍵である。
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(文責 研教 S. K)